カナダ糖尿病学会誌に掲載された総説では、1型糖尿病の管理において、座りっぱなしの行動を頻繁に減らすことの重要性と意義が論じられています。
背景
座りがちな行動とは、エネルギー消費量が少ないことを特徴とする起床時の行動を指します。座り仕事の割合は、世界的に増加しています。例えば、西洋諸国では、ほとんどの人が起きている時間の約50%を低レベルのエネルギー消費に費やしています。
座りっぱなしの生活は、糖尿病や肥満など、さまざまな心代謝系疾患のリスクを高める可能性があります。長時間の座位は糖尿病管理を悪化させることが分かっていますが、定期的な身体活動は糖尿病患者にとって多くの健康上の利点があることが分かっています。
研究によると、2型糖尿病患者において、長時間の座位を短時間で頻繁に活動することを中断すると、血糖コントロールが改善され、心代謝系リスクが低減されることが示されています。しかし、1型糖尿病患者における座りっぱなしの減少が健康に及ぼす影響については、十分な情報が得られていません。
座位保持と血糖値調節
2型糖尿病患者において、7時間の長時間の座位を短時間の低強度の活動(30分ごとに3分の活動)で中断すると、夜間高血糖を含む22時間の血糖値が大幅に低下することを示す証拠が増えてきています。翌朝の時点でもグルコース値はコントロールされたままです。
長時間の座位を中断し、15分ごとに3分間の歩行を行うことで、空腹時血糖値の改善と暁現象の予防が可能であることが明らかになりました。特に1型糖尿病の患者さんでは、暁現象が非常に多いため、これらの効果は極めて重要です。
暁現象とは、早朝に血糖値が上昇することを指します。1型糖尿病の患者さんでは、この現象が朝食後も続くことが多い。夜間の成長ホルモン分泌の誘導が夜明け現象を引き起こすことが知られています。早朝に朝食前に有酸素運動を行うことで、明け方現象を抑制できることが分かっています。
食事時の血糖管理については、2型糖尿病患者において、長時間の座位を中断して短時間の低強度の活動を行うと、朝食後および昼食後の血糖値(食後血糖値)が改善することが研究により示されています。
様々な形態の身体活動を検討した研究では、結論の出ない結果が得られています。血糖値のコントロールには継続的な運動が最も効果的であるとする研究がある一方で、2型糖尿病患者では継続的な運動よりも定期的な運動間隔の方が血糖値の管理がしやすいとする研究結果もあります。
1型糖尿病患者では、長時間の運動は一過性の血糖値上昇を引き起こし、健康に多くの悪影響を及ぼします。しかし、運動の種類を調節することでグルコース逆調節ホルモン反応を低下させれば、低血糖(血糖値の低下)につながる可能性があります。
1型糖尿病患者において、運動前後の速効型インスリンを減らすことで、運動誘発性低血糖を予防できることが研究で明らかにされています。この戦略は効果的であり、ホルモンの不均衡を引き起こすこともありません。
中断された座位と心血管リスク
血糖値のコントロールに加え、長時間の座位を中断することは、2型糖尿病患者の心血管系の健康を改善します。肥満/過体重の2型糖尿病患者において、定期的な活動間隔は血圧を下げ、血漿トリグリセリドを制御し、メタボリックシンドロームの構成要素を改善することが分かっています。
これらの観察から、インスリン抵抗性とメタボリックシンドロームは1型糖尿病患者に共通する健康状態であるため、定期的な活動間隔は特に有益である可能性が示されました。
座り仕事の中断が1型糖尿病管理に与える影響
科学者たちは、糖尿病患者の血糖値の定期的な活動間隔による改善は、インスリン感受性の増加とインスリン非依存性グルコース取り込み経路への高い依存性の組み合わせによるものだろうと解釈しています。
座っている時間を頻繁に中断すると、骨格筋収縮を介したグルコース取り込みが増加し、それが食後の耐糖能の改善と関連することが研究で示されています。
1型糖尿病における低強度の身体活動を介したグルコースコントロールに関する情報はありませんが、1型糖尿病の活動的な若年成人において、骨格筋のミトコンドリア超微細構造と生体エネルギーに変化が観察されています。
研究者らは、低強度の身体活動では骨格筋の代謝不全を完全に防ぐことはできないかもしれず、耐糖能の同等の改善を達成するためには激しい運動が必要であるという仮説を立てています。
出典